漢方染について
漢方染について
漢方染は、素材から染料・染色技法に至るまで 庶民によって受け継がれてきた知恵や技術を、一枚の布に表現した身も心も温まる逸品です。着込むほど体になじみ、良さが分かる安らぎの着物です。同じ作品は二枚とありません。
1) 糸づくり
創始者 菅原結の生家は、山形県白鷹町蚕(こ)桑(ぐわ)地区で八代にわたり、農業の傍ら養蚕を営んできました。
この糸づくりこそが“手づくり・漢方染”の原点とも言えるでしょう。手引きの糸は、機械を用いたものにはない独特の伸縮性と柔らかさを持っています。
この糸づくりこそが“手づくり・漢方染”の原点とも言えるでしょう。手引きの糸は、機械を用いたものにはない独特の伸縮性と柔らかさを持っています。
2) 下染め
こうしてつくり上げられた糸は、全て朝鮮人参による下染めがなされると、光沢のあるベージュ色に染まります。従来の草木染をさらに掘り下げ、染料を薬草にまで広げた“漢方染”の下準備が整います。下染めを施すと、後に重ね染めされる様々な薬草染料をよく吸収し 深みのある風合いが増すとともに、色落ち・日焼けの防止にも役立ちます。
3)織 り
昭和33年 織物の道を志した創始者 菅原結は織り工程にもこだわりました。現在も下請けや外注工場に頼らず100%自社工場にて生地を織り上げています。心を込めて紡がれ下染めされた生糸が 熟練の女工の手で、より方や太さの異なる糸が自在に組み合わされ、タテ・ヨコには伸びずにバイアスに伸縮する生地となります。
4) 染めと絞り
生地は様々な方法で染め上げられていきます。染料は身のまわりにあるものから特殊品まで、多種多様な薬草が用いられます。天然染料ゆえに、採取した季節や土壌により色が異なったり、染料同士を混ぜ合わせることが困難なため、幾度となく重ね染めを施します。その作業が、下染めの効果を一層引き立たせ“漢方染”独特の風合いと、深みのある味わいとなるのです。
着尺・訪問着は絞りを用いた表現になります。絞りは人類最古の柄であり、庶民によって愛用され 我が身を守るために開発されたものです。受け継がれてきた薬草と、古からの絞り技術が融合し、新たな出逢いとなりました。
着尺・訪問着は絞りを用いた表現になります。絞りは人類最古の柄であり、庶民によって愛用され 我が身を守るために開発されたものです。受け継がれてきた薬草と、古からの絞り技術が融合し、新たな出逢いとなりました。
5) 最後に
漢方染は、常に新しい感覚・従来になかった何かを追い求めながら、庶民の香りや古人の知恵を伝える作品であり、創始者 菅原結の生き方そのものだったと言えるのかもしれません。